特定秘密保護法に反対する牧師の会は、本日9月30日に発表した声明「安全保障関連法案の成立にあたって」を届ける野党の重鎮訪問を開始しました。
本日9月30日は、民主党顧問で元代表の海江田万里さんを、安海和宣共同代表とよびかけ人の星出卓也師が訪ね、約40分、和やかに懇談しました。
当会からの要請・懇談の中心は2点です。
◎安保法制廃止への展望について
◎安保法廃止のために野党がまとまることについて
特定秘密法に反対する牧師の会・海江田万里氏との会談レポート2015.9.30
レポート:星出卓也師Q今回の安保法案成立について
海江田氏:今回の問題は、何と言っても「違憲」ということ。法治国家である以上、違憲の立法によって憲法の原則を壊すのは論外。
憲法9条も大事。同時に99条も極めて大事です。憲法尊重擁護義務を、国政の長自らが違反したということ。これは法案の内容以前の、日本が憲法の下にある法治国家であることそのものを根底から揺るがせたという重大事態です。
憲法学者の小林節氏を中心に、違憲訴訟を起こすことを計画していることは非常に大事なことだと思います。しかし今の司法は、違憲であることそのものを理由には提訴できなく、つまり侵害利益がなければ違憲判断の決定打とはならない現実があります。これから自衛隊派兵等で現実にけがをしたり、命が失われたりという実害を基に違憲を争うことはできますが、現実にそのような実害が出てからでは遅いので、その前に止めなければなりません。
衆議院で与党が3分の2を取っていて、参議院でも過半数を取っている現状を何とかしなければ、これからも数に奢る強行立法が続くでしょう。来年には参議院選挙がありますが、ここで過半数を落とせば、少なくとも衆参はねじれることになります。以前は「ねじれを解消して、決められる政治を」なんて言われましたが、実際にねじれがなくなった結果が、人の意見を全く聞かない傲慢政治です。参院選で「ねじれ」が予想されれば、与党は法案が通らなくなるわけで、解散・衆参同時総選挙という手に打って出るかもしれません。衆参同時総選挙は、与党に優位という傾向があるので、その手に出る可能性もあります。
Q野党共闘について
海江田氏:おおむね賛成。でも党とすれば、同じ賛成でも色々な温度差があります。他党と組むことはありえない、と言う意見。目的を確認して選挙協力は大いにするべき、と言う意見。「国民連合政府」というスローガンは挙げられましたが、共産党も、具体的にどのような形になるかは未定なのです。ですから落ち着くべきところに落ち着くことができるように、協議は必要。年内は協議に時間がかかるかもしれません。
Q平和を創ることについて、日本の将来について、どのように考えますか?
海江田氏:日本は原子力爆弾を二つも落とされて、大きな被害者を出したという戦争の惨禍を、身をもって体験した特別な国です。そのような特別な経験をした国には、他の国にはない特別な使命があると思います。それを決して「普通の国」などにしてはなりません。もちろん国民を守るための最低限度の責任は必要です。ところがこちらから武力で威嚇をするようなことを、戦争の惨禍を経験した日本がするべきではありません。ましてや地球の裏側まで自衛隊が出て威嚇を行うなど、平和を創る道ではありません。
中国の脅威論が声高に語られます。確かに中国には思想を統制したり、国家に管理されないキリスト教を弾圧したり、問題はあります。民主化運動がインテリ層に止まっている限りは、香港の学生デモのような運動があっても持続は難しい面もあります。貧しい市民に教育が行きわたり、民主化理念が草の根的に一般市民の中に広がることが必要でしょう。そのためにもキリスト教が一般市民の民主化の大きな役割を果たす可能性があるのではないでしょうか。中国の民主化には希望があると思います。
尖閣諸島以上に、南シナ海にて中国を連合して日本が威嚇に加わるのは大きな問題が出るでしょう。南シナ海周辺は、かつて日本が大東亜共栄圏と言う名で、侵略統治した地域です。70年前の日本への感情が生々しく残っているところに、日本の自衛隊が出ていくということは、決して受け入れられるものではないでしょう。平和どころかかえって緊張を生み出すことになるでしょう。
現政権は、「一億総活躍」とか実に立派な派手な言葉で、景気回復をすると言っています。しかし日本はすでに高齢化社会となり、高度成長期のような時期は過ぎたのです。何かを消費しようにも、成長期のように消費が拡大し続けることはありません。むしろ身の丈にあった成熟が求められているのではないでしょうか。国内需要が高齢化で頭打ちなら、日本の独自の技術をもって海外に販路を求めるということもあるでしょう。しかし、過去の日本が海外に進出したような道を再び歩むべきではありません。経済成長が目指す唯一の道ではなく、まさに身の丈にあった成長が、いま日本に求められている成熟でしょう。高齢化社会に向けて、新たなニーズだって生まれてきています。そこを成長させ、成熟した社会を目指すべきであって、以前のようなコンクリートの投資ばかりでは、後の世代の負担は増える一方です。
国民の生活基盤が損なわれて行けば行くほど、不満はますます高まる。むしろ国民の社会保障が充実していけば、安定した、平和な社会が実現することになるでしょう。アメリカのような大国を目指すことは、日本がとるべき道ではないと思います。
Q「秘密法に反対する牧師の会」の今後の活動について、是非アドバイスを。
海江田氏:「特定秘密保護法」は市民が物を言えなくする、非常に危険な法律です。今はデモもできる、まだ一人一人が異なった意見を語ることが許されている社会です。一つの価値観以外を持つことが許されない、というような以前のような国ではありません。それが逮捕に怯えるようになったり、政府がやっていることを検証できなくなったりすることによって、本当に多様な意見を語ることが出来なくなるのです。市民のどのような集団も、一律に国の政策を後押しするための存在になる時、大政翼賛社会になる、まさに戦争が出来る国になるということです。国の政策に歯止めが利かない、ブレーキが壊れたような国になります。ですから「秘密法に反対する」ということは、軍国主義を許さない非常に重要な働きです。
その運動を中央で主張するだけでなく、草の根的に地域で広げることができれば、有効な世論の形成の担い手になるのではないでしょうか。沢山の賛同牧師がおられるようでありますので、「○○市の秘密法に反対する牧師の会」を各地で立て挙げて、皆さんが住んでおられる各地域で活動をすることも大事と思います。
それとキリスト教だけでなく、同じ志をもっている他の宗教とも連帯して運動をすることも大切と思います。一緒に平和な社会を創るために、頑張りましょう。