2014年12月30日火曜日

田中伸尚氏の講演 「闇の中で光を―戦争国家の中で」への応答 山口陽一師

 特定秘密保護法施行直前緊急集会

 「抵抗の時代を迎えて私たちはどう生きるのか」

田中伸尚氏の講演  「闇の中で光を―戦争国家の中で」への応答

                                                                                                                                                  山口陽一

2014年12月9日 (御茶ノ水クリスチャンセンター8F)

  今宵は特定秘密保護法施行イブです。すべての人を照らす真の光の到来ではなく、すべてを覆い隠す特定秘密保護法の到来です。覆い隠すということは罪の本質です。隠れたところで良いことをやらないでしょう。田中さんの講演で、すでに日本は戦争国家なのだと自覚しました。ファシズムは一夜にして来ると。特定秘密保護法は、米国と軍事行動を共にするためのものですが、警察が前面に出てくる治安法としての危険性がよくわかりました。教えられたことはたくさんありますが、キリスト者、牧師の立場から応答として3つの事を述べさせていただきます。
   第1は「神のかたちとして主の戦いを戦おう」ということです。田中さんは、絶対化する国に立ち向かう「ひとりの人」をずっと取り上げて来られました。中谷康子さんとの出会いが大きなことであったことがわかりました。聖書によれば、人は神のかたちに造られたものです。これに対して国は創造の秩序ではありません。国という秩序は罪の抑制と福祉のために神が許容されたものと考えられます。どちらが大事かは明白です。ローマ13章4節において「上に立つ権威」は、「あなたに益を与えるための神のしもべ」と言われています。ここから言えることは、国のために人があるのではなく、人のために国があるのだということです。私たちの戦いは、数や権力、能力ではなく神による戦いです。「剣を取る者は剣で滅びる」と言われたイエス・キリストは十字架と復活によって勝利を得られました。私たちの戦いもそのようなものです。
 第2は「霊的な戦いを良き力に守られて戦おう」です。日本における政教分離の焦点である政治と神道との癒着は、もはや国家的な偶像礼拝の兆候です。あるいは、武器輸出三原則を外して武器輸出に道を開き、原発の輸出に奔走し、カジノを誘致する等々、マモン(富)に仕えることにおいてもタガがはずれてしまったようです。私たちはこれらのことについて、自らの弱さを知っています。1941年成立の日本基督教団は、教団規則(生活綱領)において「皇国ノ道ニ従ヒテ信仰ニ徹シ」と述べ、教団統理は伊勢神宮に参拝しました。「日本基督教団より大東亜共栄圏にあるキリスト教徒に送る書翰」では、「全世界をまことに指導し救済しうるものは、世界に冠絶せる万邦無比なる我が日本の国体である」と言ってしまったのです。黙示録13章が描くところの獣や竜、それは神格化される国家権力と背後いるサタンであると考えられます。霊的な洞察力を持って見抜きましょう。そして聖霊の力に守られて戦いましょう。
    第3に、私たちの戦いは、特別なことではなく、キリスト教の信仰に徹することです。すべての心・思い・力・知性で主を愛する礼拝者、自分を愛するように隣人を愛する者、聖霊に満たされてイエスの御名で祈る者でありたいものです。「神を愛し人を愛することに徹しよう」ということです。誰の隣人になるかが大切です。聖霊に満たされてイエスの御名で祈りましょう。それが真の抵抗となります。
    闇はいよいよ深まっていますが、「光は闇の中に輝いている。やみはこれに打ち勝たなかった」、「暗やみの中にすわっていた民は偉大な光を見た」のですから。


(当日の応答に補筆したものを山口師よりいただきました。=事務局)

2014年12月12日金曜日

 特定秘密保護法 施行直前緊急集会「抵抗の時代を迎えて 私たちはどう生きるのか」

 特定秘密保護法施行前夜の129日、牧師の会は「施行直前緊急集会」を開き、180人が参加しました。また集会前に記者会見を開き、「特定秘密保護法施行を前にしての声明」を発表しました。詳細をレポートいたします。

8か月、開催を祈ってきた緊急集会当日。集会に先立つ記者会見には、メディア10社の記者が駆けつけ、IWJ・岩上安身事務所のご厚意でインターネット中継も実現。会の設立経緯や賛同者の数、「声明」を発表し、呼びかけ人4人がそれぞれの思いを話しました。同法施行を目前に廃止を求める主張をしっかりと伝え、これからも活動して行く決意を新たにするときともなりました。

 

当日の映像はコチラ…       http://www.ustream.tv/recorded/56274091
                                             http://www.ustream.tv/recorded/56274249

日本CGNTVのニュース放映はコチラ…
http://japan.cgntv.net/_inc/player.asp?pid=2304&bit=low&vid=69341&dreamon=Y

緊急集会は、192席の会場がほぼ満席。この1年間の発信を受け取ってくださった多くのみなさんと直接、顔と顔を合わせることができ、の感謝でいっぱいでした。また、新聞やインターネット告知を見てくださったクリスチャンではないたくさんのかたの参加に励まされ、キリスト者として発信することへの意義をも感じることができました。

朝岡勝共同代表の司会で開会。
主催者挨拶で安海和宣共同代表は、秘密保護法施行のイブ(前夜)に、講演会を開くことの意義深さと、1年間の活動を報告。新約聖書・ヨハネの福音書3:2021節「 悪いことをする者は光を憎み、その行ないが明るみに出されることを恐れて、光のほうに来ない。しかし、真理を行なう者は、光のほうに来る」を紹介し、「この集会が深く考え、思慮深さと神からの知恵を持って次に行動するひと時となれば幸い」と結びました。

 田中伸尚さんが「闇の中で輝く光ーー戦争国家化の中で」というタイトルで講演。ジャーナリスト・ノンフィクション作家としての幅広い見地からのお話しに瞠目。田中さんは、「決して諦めないで粘り強く法律の廃止と戦争をする国を阻止してまいりましょう」と締めくくりました。(講演要旨別項)

       田中伸尚さん
  
 講演を深める山口陽一東京基督教大学教授のレスポンスは、神に赦された信仰者として、御霊の光によって、洞察力をもち社会を見つめていきたい。神を愛し、もっとも小さいものの隣人として生きてゆく。と羅針盤の針をきっちり十字架に合わせるものでした。

○緊急に出演が決まったゴスペルディレクターの鬼無宣寿さんの歌声は、集った方々の心の奥に深く響き、癒し、神を、そして愛する我が国、隣人を愛せよ、との熱い思いへといざないました。

○集会では「声明」を「特定秘密保護法施行前夜に集う私たちの思い」として読み上げ、参加者一同の総意として拍手で確認しました。また、当日の席上カンパ139,608円は集会の運営費と活動費に充てさせていただきます。ありがとうございました。

 

       

<発表した声明>「特定秘密保護法施行を前にしての声明」
                               2014129
                             「特定秘密保護法に反対する牧師の会」
                              共同代表 朝岡勝 安海和宣
                             呼びかけ人一同
        

  昨年126日、特定秘密保護法は稚拙な法案審議と強行スケジュールによって成立しました。それから一年が経ち、明日1210日に施行されようとしています。この間、多くの国民の不安や反対の声、国の内外からの重大な懸念の声が寄せられていたにもかかわらず、政府は主権者たる国民の声に謙虚に耳を傾けることなく、むしろ法施行に向けての準備を着々と進めて来ました。これらの経過によって私たちの不安や懸念は払拭されるどころか、ますます同法施行後の社会に対する深刻な憂いを抱かざるを得ない状況になっています。ここにあらためて私たち「特定秘密保護法に反対する牧師の会」は同法の施行に反対し、速やかに廃止されることを求めます。
  そもそも同法が国会で審議され始めた当初から、これが今の政権が「積極的平和主義」の名の下に推し進める「戦争ができる国造り」の流れの中にあることが繰り返し指摘されて来ました。事実、今年7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定によって、このことは一層明らかになっています。
  今回突如として衆議院解散と総選挙となりました。政権与党は経済問題を前面に押し出して、特定秘密保護法や集団的自衛権行使などの重大な論点を選挙の争点から隠そうと躍起になっており、そのどさくさの中で同法は明日の施行を迎えようとしています。
  私たちは今回の選挙が明らかにこの二年間の政権の価値観、国家観を問うものであることを覚えます。そして立憲主義、基本的人権、思想・信条・良心の自由など民主主義社会に不可欠な理念、憲法前文及び第9条に記された平和主義、聖書が示す正義と公義、平和と和解が大切にされ、小さくされた者たちの声が押しつぶされることのない社会のために、これからも声を挙げ続けてまいります。
  かつての戦争の時代、国家によって声を封じられ、自由を奪われた人々があったことを私たちは忘れません。そのような時代に少数ではあっても屈することなく抵抗を続けた人々があったことを私たちは記憶します。そして抵抗の時代を迎えている今、信仰と良心に基づく生き方を主体的に選び取っていくことをここに言い表すものです。

 
<記者会見について>
司 会:安海和宣共同代表(単立東京めぐみ教会牧師)
声明の発表について:朝岡勝共同代表(日本同盟基督教団徳丸町キリスト教会牧師)

よびかけ人:川上直哉牧師(日本基督教団 正教師、仙台キリスト教連合世話人、被災支援ネットワーク・東北ヘルプ事務局長)、城倉啓牧師(日本バプテスト連盟泉バプテスト教会)、杉浦紀明牧師(日本ホーリネス教団 川越高階キリスト教会)、星出卓也牧師(日本長老教会 西武柳沢キリスト教会)よびかけ人(佐々木真輝牧師、吉川直美牧師、三浦陽子牧師)

   発言要旨 ●
川上直哉(日本基督教団正教師、仙台キリスト教連合世話人、被災支援ネットワーク・東北ヘルプ事務局長)
 既に全域が放射能被曝地である東日本大震災被災地から、特定秘密保護法に反対せざるを得ない現実を申し上げる。今年8月、NHK報道で、水に溶けず、マスクを透過し、ガイガーカウンターでは捕捉されない放射線を発する物質が、被災地全域を覆う範囲に飛散している可能性があると分かった。こうした「新しい知見」はこれからいよいよ積み上がることであろう。被災地では、それらを一つ一つ注視しながら、子どもたち・大切な命を守らなければならない。その結果、世間や行政の思惑との摩擦が生まれることであろう。すでに放射能に怯える母親たちは、復興を願う空気の中で「不安を覚えてはいけない」という激しい抑圧に曝され、世間や行政の思惑との間の摩擦の中で、子どもたちを案ずる自由を奪われ、深刻な人権侵害にさらされている。チェルノブイリ事故の後、ソ連政府は情報を隠し続けたが、4年後に公開し、翌年崩壊した。日本の場合、最初に玉石混淆の情報が流通し、そして今、情報の流出が極端に抑えられる事態に至った。それは「原発事故子ども・被災者支援法」の精神に反する。命を守りたいという願いを大切にしてほしい。
 
城倉 啓(日本バプテスト連盟泉バプテスト教会牧師)
 なぜ牧師が政治に発言をするのか。一つは、牧師も人間であるから。そして神学とは、政治も含む学問領域であるからである。特定秘密保護法は憲法の前提・立憲主義、憲法の三大原則(主権在民・基本的人権の尊重・平和主義)、及び個別の条文に違反している。また個人の知る権利(「表現の自由」の裏返し)を国家権力が不当に制約しているので、憲法21条に違反している。一般に軍事機密は行政組織に隠蔽される傾向があり、秘密法はその傾向をさらに促す。主権者が知ろうとすることが犯罪の構成要件とされ、行政組織の隠すことが合法となるからだ。自衛隊の武器装備などを知ることは、憲法9条を持つ主権者の権利。「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こること」(前文)を促す秘密法は平和主義にも反する。憲法は刑事訴訟手続きについて詳細に規定(3140条)。それは、明治憲法下国家権力が罪刑法定主義を厳格に守らず、政治思想犯とみなされた者が不当に弾圧された歴史に対する反省からの改正だった。秘密法は憲法の立法事実・立法趣旨に反する。また逮捕拘留された者に対する、国家権力からの逮捕拘留の理由を告げる義務を免じているので、一義的明白に憲法33条・34条に違反している。秘密法は憲法上の要請である三権分立の原則を歪めている。国権の最高機関である国会(41条)による国政調査権(62条)さえ及ばない領域を行政に認めることは、「行政国家現象」によって肥大化している行政権力をさらに大きくさせる。
 
杉浦 紀明(日本ホーリネス教団・川越高階キリスト教会)
 「治安維持法」による「ホーリネス弾圧事件」は1942年(昭和17年)626日に始まったホーリネス系教会の牧師や信徒に対する一斉検挙事件で、「検挙された牧師は134名、そのうち起訴された者は81名、重刑や獄死者19名、閉鎖された教会は約300」と言われている。当時弾圧を受けた教会関係者は、戦後70年になろうとする今も大きな心の傷を負っている。戦後生まれの私は、日本国憲法のもとで、まさか二度と同じようなことはあるまいと長年思っていた。ところが、改憲を掲げて登場した自民党と第二次安倍内閣は昨年12月、「特定秘密保護法」を多くの国民の不安と反対の中で強行可決し、その半年後の今年6月には、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を強行し、日本を戦争する国に引き戻そうとしている。戦前のホーリネス弾圧を想起させ、現代における宗教弾圧の再現を彷彿とさせる。「国民の不安を払拭する」(安倍首相)というなら、まず一切を白紙にすべき。
 
星出 卓也(日本長老教会 西武柳沢キリスト教会牧師)
 来年の第188回通常国会で、集団的自衛権行使のための法整備が始まる。自衛隊法、周辺事態法等の改正によって、米軍に対する「役務提供」の中に規定される「武器使用」の範囲の大幅拡大が予定され、軍事国家への道、まっしぐらに進んでいる。軍事国家と民主国家は対極・水と油の関係である。そして、キリスト教会にとっても、重大な問題を含んでいる。戦争遂行には限られた意思決定機関が、国会や閣議さえも超越して、秘密裏に、行政全体を統合一元化して動かすことが必要で、これを民主的に進めることは不可能だ。軍事化路線を進むほど、国民の知る権利はますます邪魔になり、国民主権は最大の敵になる。「国家安全保障会議(日本版NSC)」の構成員は、首相・外相・国防省・官房長官の4名だけで、つまり重大な決定が国会を越えて、閣議も超えてできるシステムがすでに出来上がっている。第186回通常国会で、国会法と参議院規則の改正案、参議院情報監視審査会規則案の三法案が強行採決された。特定秘密保護法に基き、戦後初めて国会に秘密会を新設するという、国会の在り方に関する極めて重要な法であった。「国家の安全保障を損なうに著しい恐れがある」と見做されれば、国政調査権を持っている国会議員に対しても情報を隠し、議員の国政調査権も制限できる内容を、国会自らが採択してしまった。秘密保護法の最大の敵はテロや情報ではなく「国民主権」である。「主権在民」は今まさに瀕死状態である。キリスト教会にとっても大いな関係がある。70年前の時代をみれば明らか。とくに「敵意」がたきつけられ、時代が「敵意」を取り込んでいくとき、「隣人」を愛するという聖書の教えが揺るがされることになる。若者を教会がら戦場に送り出すことはできない。隣国の友との和解を考える時、真実を知ることが不可欠である。

 
<緊急集会>

○講演○ 「闇の中で光を--戦争国家化の中で」 田中伸尚氏 (要旨)


二つの「前夜」と『前夜』
 
 今日は特定秘密保護法施行の「前夜」。時代は改憲の「前夜」でもある。今回の衆院選と16年参院選は、そういう意味で戦後最大の選挙となるだろう。
Ⅰ.廃止するほかない秘密法。
 この法は、公安や警察が前面に出る。「特定秘密」漏らすおそれの有無の適正評価、警察組織が不可欠→治安維持法体制―戦争国家化・推進・拡大と軌を一にするものだ。
Ⅱ.戦後精神とコヴェナント(誓約)
 「国家は嘘をつく」。伊丹万作の言葉。「だまされるということ自体、ひとつの悪である」「だまされていた」といって平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう」。
 国家を疑う。それが戦争を経験して多くの犠牲を経験した(加害の認識は随分時間が経ってからだが)戦後意識の始まりだった。国家への疑いは、「国のため(天皇ため)の死」を拒否することであり、その戦後の認識が結実しているのが憲法であると田中氏は指摘された。
 「殺さない/殺されない/殺させない」。二度と戦争をしない!―この非暴力平和主義と個人の尊厳が憲法で誓約していることなのだ。憲法は「国家は嘘をつく」ということを前提として、国家権力を縛るものとして、国民が権力者に対して守るべき義務を求めるものだ。
Ⅲ.克服されざる明治国家意識との攻防
 戦後の保守政権の方向は、国民意識の再統合と愛国心の掘り起し、涵養であった。①改憲②教育基本法改定目指す→国家に抵抗しない国民づくり―戦後精神と憲法とは逆向き―56年参院選で改憲にはブレーキがかかった。戦後、自民党政府は明治の国民意識の再統合を4点にわたってもくろんだ。紀元節、元号法、国旗国家、靖国神社国家護持。前の3つは実現し、憲法20条の改憲で、靖国国家護持を実現しようともくろんでいる。靖国神社について、推進派が考えていることは、まず靖国神社の国家的位置づけを国民意識の中に刷り込むこと。最終的には改憲によって国家護持を目指している。克服されざる「国のため」意識との攻防の例…自衛官強制合祀―公務死の自衛官の夫をキリスト者の妻の拒否を無視し、国が護国神社に合祀。個人の意思・信仰・思想無視、「神社は非宗教」「自衛官の士気高揚」―国家神道意識の存続―克服されざる明治―戦後27年後の事件であった。妻の裁判提起(73年)―単独者として。脅迫状、批判、キリスト者からも。「国のために死んだのだから」―敗戦前には、想像できない合祀拒否―応答した人びと―単独者と隣人→彼女の抵抗は最高裁敗訴後も続く。 
Ⅳ.私たちは今、どこにいるのか
 「ファシズムは一晩で来る」。1999年から急速にこの国は変質して来て、そして安倍政権になり、さらにスピードアップした。国旗国歌法1999年、周辺事態法1999年、教育基本法改変2006年、集団的自衛権容認閣議決定2014年・・・戦争できる国へひた走っている。道徳教育推進教員の導入もまた「戦争できる国」への準備である。社会は、排外主義・異常な国粋主義の空気、ヘイトスピーチ、在日大学教員に対する名指しの攻撃などであふれている。近隣諸国との緊張感をつくっているのは、改憲のためである。現政権べったりのマスメディアは、権力の批判というジャーナリズムの精神を失っている。
Ⅴ.抵抗の時代へ
   新たなる戦前の予感について、「未完の戦時下抵抗」の連載「いま、戦争国家化の中で」を開始した。
 これまで、戦時下での抵抗の6人のケースを取材した。吉田隆子、細川嘉六、鈴木弼美、浅見仙作、竹中彰元、浪江虔―さまざまなスタイルでの戦時下抵抗である。たとえば、『抵抗のモダンガール』吉田隆子は、治安維持法で4回検束、検挙。音楽家として唯一戦争応援歌作曲しなかった。6人のうち、3人が宗教者で、うち2人はキリスト者。戦時下で教団が荷担・協力の立場に飲み込まれていった。41年アジア太平洋戦争開始以後の勝利の下で、国民の99%以上が「我々の戦争」と捉え戦意=愛国心昂揚で抵抗は困難になった。
Ⅵ.諦めない抵抗の継続こそ闇の中での光
 国家に対する民衆の不服従権の確立訴えた「アジアに対する日本の戦争責任を問う民衆法廷」大法廷の不服従宣言は、宣言だけで終わった。無駄だったのだろうか? 
 戦争国家化の中で、「私」、「あなた」が何をするか問われている。非暴力で考えられるあらゆる方法をとること。小さくても、一つでも抵抗は無駄にはならない。必ず他者に伝わっていく。井上靖の遺作で、小林多喜二の生涯を描いた評伝劇「組曲虐殺」で歌われている曲を紹介する。

「信じて走れ」
愛の綱を肩に、希望めざして走る人よ
いつもかけ足で 森をかけぬけて
山をかけのぼり 崖をかけおりて
海をかきわけて 雲にしがみつけ
あとにつづくものを 信じて走れ 

在日韓国人牧師の崔昌華を紹介する。渡日35年、名前の民族語音読み定着、指紋押捺拒否―外国人登録法廃止まで、画期的人権獲得運動に力を尽くした。崔牧師は「この世にある限り、この世に倣わず、この世と闘い、その苦難を引き受ける」と、誰もが諦め、運命のように受け止めていたことを否定し、人間性を取り戻すことを諦めなかった。

「一番大切なことは、決してあきらめないことです。困難を前に運命だとあきらめ、自分にできることは何もしない。それが最悪の選択です」(E・サイード) 

  レスポンス○ 山口陽一牧師

 

  感想から○
◇「言いたいことを言うのではなく、言わなければならないことをいう」(桐生ゆうよう)
 これがジャーナリズムの根幹であるが、戦意が高揚する中で言わなければならないことを言うのはとても困難だ。だからこそ「前夜」に言うべきことをいう「抵抗」が必要になるのだと田中氏は力強く語られ、歴史を通して「抵抗」をした単独者たちを紹介し、小さな抵抗であってもそれが決して無駄にならないこと訴えられた。牧師としてこのことは胸にささった。「言わなければならないことをいう」。ここに預言者としての牧師の務めがあることを肝に銘じなければならない。

◇「あとにつづくものを 信じて走れ」。私たちキリスト者にとって前を走るキリストに続くことであり、その小さな歩みが光となり、祈りの路となることと思う。闇また一段と深まる「前夜」に改めて主に従う信仰を問われた講演だった。
 
 
 
 


<メデイアでの報道記事>

クリスチャン新聞 http://jpnews.org/pc/modules/mysection/item.php?itemid=1012

FEBC http://yona.febcjp.com/2014/12/10/sikozenya/

東京新聞 12/10付

しんぶん赤旗 12/11付

 
 
 




2014年12月10日水曜日

「特定秘密保護法施行を前にしての声明」

12月9日に発した声明を紹介します。

「特定秘密保護法施行を前にしての声明」

2014年12月9日
 「特定秘密保護法に反対する牧師の会」
共同代表 朝岡勝 安海和宣
 呼びかけ人一同


 昨年12月6日、特定秘密保護法は稚拙な法案審議と強行スケジュールによって成立しました。それから一年が経ち、明日12月10日に施行されようとしています。この間、多くの国民の不安や反対の声、国の内外からの重大な懸念の声が寄せられていたにもかかわらず、政府は主権者たる国民の声に謙虚に耳を傾けることなく、むしろ法施行に向けての準備を着々と進めて来ました。これらの経過によって私たちの不安や懸念は払拭されるどころか、ますます同法施行後の社会に対する深刻な憂いを抱かざるを得ない状況になっています。ここにあらためて私たち「特定秘密保護法に反対する牧師の会」は同法の施行に反対し、速やかに廃止されることを求めます。
 そもそも同法が国会で審議され始めた当初から、これが今の政権が「積極的平和主義」の名の下に推し進める「戦争ができる国造り」の流れの中にあることが繰り返し指摘されて来ました。事実、今年7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定によって、このことは一層明らかになっています。
今回突如として衆議院解散と総選挙となりました。政権与党は経済問題を前面に押し出して、特定秘密保護法や集団的自衛権行使などの重大な論点を選挙の争点から隠そうと躍起になっており、そのどさくさの中で同法は明日の施行を迎えようとしています。
 私たちは今回の選挙が明らかにこの二年間の政権の価値観、国家観を問うものであることを覚えます。そして立憲主義、基本的人権、思想・信条・良心の自由など民主主義社会に不可欠な理念、憲法前文及び第9条に記された平和主義、聖書が示す正義と公義、平和と和解が大切にされ、小さくされた者たちの声が押しつぶされることのない社会のために、これからも声を挙げ続けてまいります。
 かつての戦争の時代、国家によって声を封じられ、自由を奪われた人々があったことを私たちは忘れません。そのような時代に少数ではあっても屈することなく抵抗を続けた人々があったことを私たちは記憶します。そして抵抗の時代を迎えている今、信仰と良心に基づく生き方を主体的に選び取っていくことをここに言い表すものです。

 

2014年12月6日土曜日

本日、「牧師の会設立1周年」です。この間のみなさまの応援、ご理解に感謝いたします。

共同代表がコメントを出しましたので掲載します。  

「特定秘密保護法に反対する牧師の会」設立1年を迎えて


 2013年12月6日。特定秘密保護法案の強行可決・成立を前に、私たちは、同時多発的に「牧師の会」の立ち上げを示されました。同じように危機感を持つ教派を超えた全国の牧師が立ち上がりました。賛同の名のりを上げた方は1年で556人を数えています

 この1年、私たちは、特定秘密保護法の廃止に向けて様々な取り組みをしてきました。鍵となる節目その時々に声明を発表し、法律の撤廃要請の声を国会議員や内閣府に手渡してきました。事態を憂う牧師の声を集めてブックレットも出版しました。そして同法施行前夜の12月9...日に、初めての記者会見・講演会を開こうとしています。

 多数の国民が不安を抱え、反対の声をあげ、国外からも懸念が寄せられているにもかかわらず、憲法違反の法律は施行目前です。為政者の横暴によって、目と耳、口をふさがれるような時代が来ようとしています。そして、現政権は立憲主義を踏みにじる手順で集団的自衛権容認を閣議決定し、防衛装備移転三原則によって軍需産業を生み出し、私たちが愛してやまないこの国を、戦争ができる国のかたちへと作り変えるべく加速度を増しています。

 多くのキリスト者や、良心的市民のみなさんと一緒に考え、祈り、祈りに押し出されて行動してきた1年の歩みを振り返るとき、私たちの心を占めるものは、決して挫折感やあきらめではありません。「御国を来たらせ給え。御心の天に成るごとく地にも成させ給え」と祈る私たちは希望を失いません。  キリスト者として牧師として、平和を作るように召された者、和解の務めを委ねられた者として神を見上げつつ歩みます。微力ながらも法律廃止に向けて、これからも活動していく所存です。 当会は特殊な会です。存在しない方が良い会です。一日も早く会が解散することを願ってやみません。               


共同代表 朝岡勝  安海和宣

2014年12月6日

2014年12月4日木曜日

秘密保護法施行直前緊急集会 追加情報です

●講師の田中伸尚さんって・・・・
 

129日の当会主催緊急集会で講演するノンフィクション作家の田中伸尚さん(たなか・のぶまささん)をご紹介します。


 

 朝日新聞記者を経て独立。2002年、『憲法を獲得する人びと』(岩波書店)により第8回平和・協同ジャーナリスト基金賞受賞。2011年『大逆事件 死と生の群像』により日本エッセイスト・クラブ賞受賞。

  田中さんは今年三冊の著作『抵抗のモダンガール作曲家・吉田隆子』『未完の戦時下抵抗』『行動する預言者 崔昌華 ある在日韓国人牧師の生涯』を立て続けに出版。

 自衛官合祀拒否訴訟を闘った中谷康子さん、時代と国家に全身で抗い音楽に身を焦がすように生きた女性作曲家・吉田隆子さん、在日韓国人で人権活動家の崔昌華牧師など、戦中・戦後、国家や権力に抵抗し続けた人々の生き方を書きつづけている方です。

 国家主義やレイシズムが蔓延するいまの日本で、彼らが何を主張し、どのように生きたのかをお話しいただき、私たちがこれからどのように生きるべきかについて示唆を与えてくれる講演会です。

 

 
●レスポンスの山口陽一さんからのメッセージです・・・

 
 
 
田中さんの講演を受けて、山口陽一さん(東京基督教大学教授・当会よびかけ人)がレスポンスします。山口先生のメッセージを紹介します。

  「田中伸尚さんのお話をうかがうのは楽しみです。『日の丸・君が代の戦後史』『靖国の戦後史』『憲法九条の戦後史』など、大変有益な書物として、使わせていただいています。最近の『未完の戦時下抵抗』も必読でしょう。当日の講演に大いに期待します。また、キリスト者・牧師としてささやかな応答をさせていただきます。みなさん、是非、お集まりください。」

 


 
 

 

2014年11月6日木曜日

特定秘密保護法施行直前緊急集会 「抵抗の時代を迎えて、私たちはどう生きるのか」

12月10日の特定秘密保護法施行を前に、あらためてこの問題について学び、意思を表明する機会を持ちたいと願って、牧師の会主催の講演会を企画しました。ぜひお出かけください。

特定秘密保護法施行直前緊急集会

「抵抗の時代を迎えて、私たちはどう生きるのか」

 

 
日時:12月9日 19:00~21:00(18:30開場)
会場:お茶の水クリスチャンセンター8階

〒 101-0062 東京都千代田区神田駿河台2-1
             お茶の水駅より徒歩2分
            (JR:中央線、総武線、 東京メトロ:丸ノ内線、千代田線)


 主催:特定秘密保護法に反対する牧師の会
内容: 講演 田中伸尚氏(ノンフィクション作家)、
    レスポンス 山口陽一氏(東京基督教大学教授)
※入場無料、席上カンパあり


2014年10月31日金曜日

賛同人が554名となりました。引き続きの賛同を募っております。

賛同人第十次名簿を確定しました。554名となりました。
多くの方々のご賛同に心から感謝申し上げます。


<牧師・伝道師のみなさま、ぜひ当会へのご賛同をお願いします>

 12月10日の秘密保護法施行がせまっています。
 私たちは、この法律が「安全保障」の名の下に国民の自由を制限し、互いに疑心暗鬼を深めさせる秘密国家を出現させ、戦争をする国へと人々を駆り立て、人々の良心を踏みにじり、特定の思想や信仰を持つ人々を排除する道を開くものだとして、反対しています。
 これは私たちの信仰告白です。
 かつて治安維持法下において宗教弾圧を経験した歴史を思い出します。
 憲法をないがしろにする法律の下で、イエスキリストをただ唯一の主と告白するものとして、私たちは、今またかつてのような時代が再来しつつあることに重大な不安と危惧を抱き、見過ごすわけにはいかないのです。
 
 
 
 
ぜひご一緒に祈り、祈りに押し出されて歩みをともにしてまいりましょう。
賛同は会のアドレスから教団教会名・お名前・職名をお送りください。

*お名前の公開は、牧師・伝道師など聖職者とさせていただいております。牧会者としての決意の表明です。
 
(教会員やキリスト者以外のみなさまからの賛同は公表しておりません。)


よびかけ人      31名
第一次賛同人  280名
第二次賛同人  114名
第三次賛同人   35名
第四次賛同人   20名 
第五次賛同人   30名
第六次賛同人   12名 
第七次賛同人    8名
第八次賛同人    10名

第九次賛同人   10名
第十次賛同人    4名  実務の都合で公開が遅れましたことをお詫びいたします。

合計      554名
第十次名簿は以下から・・・

https://docs.google.com/spreadsheets/d/14Bk9ggNZkquGulzHFZSp9XIWyUS-kB_7zdpV2bltcLQ/edit?usp=sharing

2014年10月24日金曜日

【講演会のお知らせ】 速報

【講演会のお知らせ】


12月10日の法施行を前に、牧師の会主催の講演会を準備しています!

12月9日(火)19:00~21:00
お茶の水クリスチャンセンター 8階チャペルにて
講師にノンフィクション作家の田中伸尚さんをお迎えします。

詳細は追ってご案内します。ぜひ今からご予定ください。

【お願い】

大変恐縮ですが、今回の講演会開催のためにカンパを募っております。
私たちの会は、会費がなく、手弁当で活動しています。
講演会の成功のために、趣旨にご賛同くださり、ご支援いただける方は、以下の口座までぜひご協力をよろしくお願いします。

ゆうちょ銀行...

振替口座番号:00160-8-764802
名義: 安海和宣 (アツミ カズノブ) 
※この口座は共同代表の個人名義ですが、牧師の会専用口座で事務局が管理しています。

2014年10月14日火曜日

特定秘密保護法施行の閣議決定にあたっての声明を発表し、首相官邸におくりました。



本日、特定秘密保護法の12月10日施行が閣議決定されました。

これをうけて特定秘密保護法に反対する牧師の会は、抗議の意を声明として発表し、首相官邸に送りました。


   特定秘密保護法施行の閣議決定にあたっての声明


                                                2014年10月14日                                                                                                                                                                    特定秘密保護法に反対する牧師の会

                               共同代表 朝岡勝 安海和宣

 安倍内閣は本日14日、多くの国民の反対や懸念、不安の声、また政府与党内からの慎重審議の声をよそに、特定秘密保護法の運用基準を定め、同法を12月10日に施行すると閣議決定しました。ここに私たち「特定秘密保護法に反対する牧師の会」は、今回の閣議決定と法施行の動きに強く抗議します。

 同法は昨年12月、十分な議論も経ないままに強行採決を繰り返し、12月6日、民主主義のプロセスを無視して決定されました。その際も多くの国民が、主権 者である私たち国民の知る権利、表現の自由、思想・信条・信仰の自由、結社の自由など基本的人権を制限しようとするこの法を問題視し、反対の意志を表してきました。国外からも報道の自由や知る権利という民主主義国家が基本的に有している自由や権利が制限されることに対し、重大な懸念が寄せられて来ました。
 今年7月に入って、政府が募集した運用基準・施行令へのパブリックコメントには、2万3,820通もの意見が寄せられ、その多くは同法の運用に対する懸念 や反対、また法そのものの廃止を求める声でした。しかしそれらの貴重な国民の声に真摯に耳を傾けることなく、形式的な手続きによって運用基準が定められ、 同法が施行へ進むことを主権者である私たちは到底認めることができません。

 そもそも特定秘密保護法は、安倍内閣が推し進める「戦争する国づくり」の流れの中にあり、国家安全保障会議の設置、武器輸出三原則の見直し、集団的自衛権 行使容認の閣議決定、日米ガイドライン見直しなどと密接に結びついています。事実、先日の国会衆院予算委員会の質疑において安倍首相は、「今後、集団的自 衛権を行使する事態が起こった場合、武力行使の新三要件を満たしたと政府が判断する際の根拠となる情報が、特定秘密保護法に基づく特定秘密に指定される可能性がある」と答弁しました。

 すでに私たちはこの法律が「安全保障」の名の下に国民の自由を制限し、互いに疑心暗鬼を深めさせる秘密国家を出現させ、戦争をする国へと人々を駆り立て、人々の良心を踏みにじり、特定の思想や信仰を持つ人々を排除する道を開くものだと指摘しました。その懸念は払拭されるどころか、「共謀罪」法案再提出の動きなどをみるとますます深まっていると言わざるを得ません。
 かつて治安維持法下において宗教弾圧を経験した歴史を継承する私たちは、今またかつてのような時代が再来しつつあることに重大な不安と危惧を抱いています。政府は虚心坦懐に国民の声に耳を傾け、この法の施行に踏み切ることのないようここに強く要望し、抗議の意をあらわします。

2014年10月10日金曜日

ノーベル平和賞発表にあたって

ノーベル平和賞発表にあたって

             

                             2014年10月10日


本日、2014年度のノーベル平和賞が発表され、パキスタンのマララ・ユズフザイさんと、インドの児童人権活動家カイラシュ・サティアティさんが受賞されました。特に女性の人権向上とパキスタンの平和のために銃撃事件をももろともせずに勇敢に歩む17歳の彼女に、心からの祝意を表します。


私たちが願っていた「憲法9条を保持してきた日本国民」の受賞は成りませんでしたが、ここに私たちは42万3685筆の署名をされた方々、戦後70年平和を希求してきたすべての国民とともに、計り知れない多くの労を果たされ、あらためて憲法9条の価値を知らしめてくださった「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会の皆さまに心からの御礼を申し上げます。


私たちの国はいま、立憲主義が揺らぎ、憲法9条の定める平和主義は空洞化し、主権者である国民の知る権利、思想、信条、良心の自由が著しく脅かされ、集団的自衛権行使容認の閣議決定以来、海外で他国との戦争に参加する準備が着々と進められつつあります。


そのような中で今回のノーベル委員会がノミネートを受理したことは、日本が世界の中で果たすべき真の役割が武力に拠らない平和づくりにあることを示す、大切な「しるし」となるでしょう。


私たち「特定秘密保護法に反対する牧師の会」も、この憲法9条を保持してきた日本国民のひとりひとりとして、ますますキリストにある真の平和を証ししつつ、さらなる平和作りのために働く所存です。

 


2014年10月10日 特定秘密保護法に反対する牧師の会

共同代表 朝岡勝 安海和宣

2014年10月1日水曜日

ニュースレター№⒒を発行しました。

しばらくお休みしていましたが、ニュースレター№⒒を発行しました。臨時国会開会日の行動の報告を中心に、立憲デモクラシーの会よびかけ人の中野先生の講演要旨も掲載しています。

アメリカからみた日本

【Opinion】
アメリカ滞在中の当会よびかけ人・キスト岡崎さゆ里師から所感がとどきました。ご紹介します。
 
 

   **************************

 NY・マンハッタンで911跡からウォール・ストリートに向かう際、たくさんのパトカーがそこら中に集まり道路を封鎖し始めました。ものすごい人だかり、そして騒ぐ声が聞こえてきたと思ったら、オキュパイウォールストリートに遭遇しました。
 地球温暖化の危機を訴え企業の利益優先のあり方に反対するという主張でした。必ずし...
も怒声ではなく、しかし一致して声をあげる人々のエネルギーに圧倒されました。「怒りの平和主義者」と書かれた看板を高々とかかげた人をやっとのことで写せましたが、封鎖の範囲が広すぎて全然コアに近づけませんでした。ガードのこちらからも応援や拍手があり、またポリスもあまり危機感なくのんきそうだったのは、暴力的ではなく「ピースフル」なデモ運動だったからでしょうか。道路封鎖の中を、塾にたどり着きたいと訴える子どもに、ポリスが付き添って通してあげている姿もありました。

 アメリカと日本。村&単一社会と大陸&移民社会、という背景の違いもありますし、もちろん価値観の規範となる宗教性も違います。まったく異なる社会性を持つアメリカと日本を、国全体の規模で比べるのは難しいですが、NYと東京という大都会の間だけで気質の違いを比較するのは適切かもしれません。
 常々感じることですが、「個人レベル(自分のこと)」ではNYの人は、かなり我慢強いと思います。サービスが悪い、レジが混んでいる、など些細なことでいらいらしたり怒りを表すのは「大人じゃない」という意識があるように思います。電車が遅れてもよくあること、ましてや車椅子の人がバスに乗るのに時間がかかるときなど、当然のように静かに待っています。
 けれども、「公レベル(みんなのこと)」、つまり権利問題などの重要なことではかなり怒りや意見を強く発しますし、それをする人もしない人も各人の選択を尊重している気がします。

 日本は、ユニフォーマティズムの強い国なので、全体主義に傾きがちかもしれません。「みんな同じ」を善しとする社会で、他人と違う意見を声に出していくのは勇気が入りますね。いくらそれが「正しいこと」であっても「よくないこと」になってしまうのです。アメリカの教会でお話するとき、「皆さんなら『あなたはユニーク(人と違う)ね』と言われればとても得意!でしょう。なのに、日本では(人と違う、ということは)悪口なのですよ」と言いますと驚かれます。それは、神が一人ひとりをお造りになられたから、という聖書的根拠が文化の中に染み付いているからでしょう。
 つまり、自分が(そして他者も)唯一の存在である(オンリーワン)ことを自覚しているのでアメリカでは「世界に一つだけの花」なんて今さらという感じかもしれません。ですからそれぞれの「自由」をとても大事にします。しかし「みんなのため」を思うのはいいのですが、その加減が難しいとも言えます。アメリカが「世界の警察官(のつもり)」と揶揄される理由でしょう。

 日本でも、アメリカのシリア攻撃について、「アメリカが集団的自衛権として攻撃している」との報道がされているようですね。こちらでは、isis(「イスラム国」と訳されているようですが)によるクリスチャンや女性に対する虐殺や虐待行為などかつてない残虐な行為について報道されており、特に共和党はそのネタをもって、オバマ大統領がisisに対して弱腰だと非難しています。今回のシリア攻撃についてオバマ大統領は今回の「isis」または「isil」と呼ぶ過激派に対しての軍事行動を、「攻撃」ではなくあくまで「自衛権の範囲で」のみ行っている、という意味です。
 しかしそれでは制限があるため、「イスラム国」の被害にあっている現地の人達のことは助けないのか、という意見もあり、その声を共和党は利用してオバマ大統領を攻撃し、イスラムに甘い「イスラム ラバー」と悪口を叩くほどです。イスラムに対してというよりも、それほどテロ行為に対しての嫌悪感と恐怖が強いのでしょう。考えて見れば、自分の国土で戦争をしたことのない国にとって、911は唯一の「外部からの戦闘攻撃」なのです。(また、皮肉なことに「911」という数字は、日本で言えば「119」つまり救急の助けを呼ぶ番号です)

 ですので日本と違うところは、集団的自衛権はアメリカでは国民意識として好意的または当たり前に受け止められていることでしょうか。「自由」は戦って得るもの。そして守り続けるべきもの、と。「正義の戦争(Just War)」という概念を持っている国ですから、国民はアメリカのシリア攻撃が「isisイスラム国」という過激派テロ組織が行っている虐殺に心を痛めそれを止めるためだ、と思っているのかもしれません。

 一方、日本ではどうでしょうか。
 日本はイスラム諸国との関わりがあまり無いですし、直接被害を受けているわけではないので、あまり関心がないかもしれません。では私達の国に、もしイスラム国のテロ行為が起きたらどうなのでしょうか?または、イスラム圏の国々との利害関係が直接的に響いてきたらどう受け入れるのでしょうか?
 日本人は世界を見るときに、単に「自分に影響のある国」だけに目をやり(良くも悪くも)それを意識しすぎているように思います。結局は「自分中心」に世界を見ているだけになる恐れがあります。しかしかといって、今の自民政権が言うように「だから他国を救うため我々も武器を取らなければ」というのは全く違います。それもまた、「人のため」の仮面をかぶった自己主義と透けて見えるからです。
 アメリカとその関連国のしている行為を批判していくのはもちろん重要です。しかし同時に、例えば「イスラム国」で犠牲になっている人たちをどうやって助けていけばいいか、考えなくてはなりません。両方の視点がなければ、本当に「平和を作るもの」とはいえません。自分は何もせず人の批判をして、また関係ない人が傷んでいるのも見て見ぬふりという「平和」ではなく、メノナイト派のクリスチャンのように、自分は丸腰で「人間の盾」となって現地の人を守る、徹底した平和主義を貫く戦いができるかどうか。

 だからこそ、日本の取るべき道はただひとつ、「日本国民だけのためでなく、全世界の人のために憲法9条を死守し、モデル国となっていく」ことです。 そこにほんの僅かでも「自分の国さえ戦争しないならいい」という思いがあっては、それは完遂できません。
 日本が一番意識しているのがアメリカ。そしてアメリカの一挙手一投足に、政治家ばかりか国民も右往左往している気がします。アメリカでは逆に、そんなに日本を意識していません。特に国民は、日本がどうなっているかなどは知りません。
 そうしますと、沖縄の基地問題にしてもアメリカを相手にデモや反対運動をしてもあまり意味が無いと思います。なぜなら、アメリカの「国」は日本の「国」と取り決めをしているからです。
 「国」に一番影響を与えることができるのはその国の国民です。つまり、私達国民が選んだ日本の国が沖縄の基地を許しているのです。アメリカからすれば、「そんなに沖縄に基地を置きたくないならなぜ自民党に政権を任せているの?」ということです。海外に在住している時につくづく感じましたが、選挙権というのは宝物です。この国の国民しか、国を変えることが出来ません。逆に言えば国民にはこの国を変えることが出来る、その民主主義を得ているありがたさ。民主主義の質の高さを測る基準の一つは「個人の自由の第三者(特に政府)による侵害からの保護」だということです(民主主義評価法による)。
 日本国内の戦いがとても重要になっていると思います。そしてさらに重要なのは、それぞれの国に置かれた国民が、政治上の争いに巻き込まれて互いにヘイトを増長させることなく、共に「自分たちを利用しようとしている、自分たち一人ひとりの命を軽んじている本当の敵」を見据えて、分かり合い団結していくことだと思っています。

2014年9月20日土曜日

第4回9条世界宗教者会議 (2014/12/1~5)のお知らせ

第4回9条世界宗教者会議が2014年12月1日(月)~5日(土)に開催されます。実行委員会事務局よりお知らせいただきましたので紹介します。

詳細はリンクからどうぞ


http://ncc-j.org/modules/pico2/

2014年9月9日火曜日

【日本のみなさんへ マーチン・ルーサー・キング ジュニア師からの手紙】

 
 
 
 
 
 
 
【日本のみなさんへ マーチン・ルーサー・キング ジュニア師からの手紙】
貴重な歴史資料を紹介します。

日本のみなさんへ

日本は、西洋と東洋の架け橋となる可能性を持つ国です。 ...

西洋と東洋。
お金持ちと貧しい人。
白人と有色人。
今、世界が直面する緊張する課題を仲立ちする使命を授かっているのです。
その理由は、日本は戦争の恐ろしさを知っており、他のどの国も経験したことがない核の惨事の雲に覆われる苦しみをたどってきたからです。
日本は、まさに世界平和のために架け橋となることができます。
日本は、貧困の中から立ち上がり、驚くべき経済成長をとげることができることを証明しました。
日本は、人種差別の屈辱を知りながら、今も民族的な不和の種をもつ国との接点を持っています。
あの不幸な戦争が生み出した(日米)混血の孤児たちに対しても、国を挙げて妥当な対策のアクションが取られるべきでしょう。
私はあなたたちの美しい国を訪れる日を楽しみにしています。素晴らしい志を持ち、兄弟愛を持った米国の人たちの願いを届けることができる機会を与えられるように願っています。

心を込めて
マーチン・ルーサー・キング ジュニア

(超訳:特定秘密保護法に反対する牧師の会事務局)


1967年12月13日に、マーチン・ルーサー・キング ジュニア師が、日本国民に向けて書かれた「手紙」です。
このころはベトナム戦争の最中ということもあるでしょう。また戦後の荒廃から立ち上がった日本の可能性に言及しています。当時、アメリカでは戦争花嫁や日米の混血児の問題などが話題になったことでしょう。いろいろな課題がありつつも、背景には憲法9条をもつ日本への尊敬とかぎりない期待が込められています。
47年を経て、いまだに解決されない問題が多々あります。特に沖縄の基地の問題や、秘密保護法の施行を控える現在を思うとき、キング師の精一杯のエールをいま、このときの私たち日本人へのものとして受け取ることができるのではないでしょうか。


http://www.thekingcenter.org/archive/document/letter-mlk-people-japan#

2014年8月1日金曜日

賛同人が550名となりました。感謝いたします。

賛同人第九次名簿を確定しました。550名となりました。
多くの方々のご賛同に心から感謝申し上げます。お知り合いの牧師・伝道者にぜひご紹介ください。
賛同は会のアドレスから教団教会名・お名前・職名をお送りください。

よびかけ人     31名
第一次賛同人  280名
第二次賛同人  114名
第三次賛同人   35名
第四次賛同人   20名 
第五次賛同人   30名
第六次賛同人   12名 
第七次賛同人    8名
第八次賛同人    10名

第九次賛同人   10名

合計      550名
第九次名簿は以下から・・・


https://docs.google.com/spreadsheets/d/1DrjIWlaKw1wCW68lpB-WRZ67U8WrVz7esoUeDki3vCg/edit?usp=sharing

2014年7月29日火曜日

「秘密保護法」運用基準・施行令にパブリック・コメントを出しましょう!

【重要なお知らせ】

「秘密保護法」運用基準・施行令にパブリック・コメントを出しましょう!


 
秘密保護法の運用基準案と施行令に関する政府の意見募集(パブリックコメント)が7月24日に開始されました。8月24日まで。

法律的に詳しい意見は、専門家からたくさん上がると思いますが、素人なりに「法律に反対」、
「不安が多い」など、シンプルな意見でも、たくさん上がることが大切ではないでしょうか。
みなさん意見を出しましょう。

Q:パブリックコメント(意見公募手続)とは?

A:国の行政機関は、政策を実施していく上で、さまざまな政令や省令等を定めます。政令や省令等を決めようとする際、あらかじめその案を公表し、広く国民から意見、情報を募集する手続です。
 

Q:今回のパブコメの目的は?

A:特定秘密保護法は昨年12月に成立しましたが、その後も、憲法に違反し、国民の知る権利を侵す恐れがあることから国民から大きな批判があります。政府は外部有識者の意見を参考に素案をまとめましたが、さらに、国民の意見も聞くパブコメの手順も踏み、批判を和らげようとしています。

 
Q:何に対する意見を募集するのですか?

A:素案は秘密保護法の運用基準と、関連する政令2件の合計3件に対する意見です。そのうち政令の1件は「法律施行令」のため、行政手続法により30日以上のパブコメを行わなければならないことになっています。残り2件は法的には必要はありませんが、今回は、一緒に意見を募集することになりました。

 
Q:パブコメで上げた意見は反映されるのでしょうか?

A:昨年9月に行われた「秘密保護法の概要について」の意見募集には、15日間で約9万件の意見が寄せられました。そのうち8割が反対意見でしたが、政府はこの声を無視し、法律に反映されたとは言えません。政府が国民の意見をどのように扱い、反映させるのか、きちんと監視しましょう。

 
Q:では、パブコメを出す意義は?

A:多くの人がパブコメを出すことで、関心を持っている人がどんなにたくさんいるかということを政府やマスコミに知らせることができます。それによって、このまま法律を施行させていいのか、国民の意見を無視するとこのまま政権にとどまることができないのではないか、次の選挙の結果に大きく影響するのではないか、という圧力をかけることになります。秘密保護法の施行停止、廃案へのあらゆるチャンスを活用しましょう。


Q:意見はどのように送ればいいの?

A:内閣官房のホームページから。または電子政府の総合窓口「e-Gov(イーガブ)」の「パブリックコメント」コーナーを選び、キーワードによる絞り込み検索に「特定秘密」と入力すれば、表示されます。サイト内の「意見提出フォーム」や電子メール、ファクス、郵送のいずれかで意見を送ります。


Q:3件の意見とは、それぞれ何を聞かれているのでしょう?

A:以下の3点です。

①「特定秘密の保護に関する法律施行令(案)」に対する意見募集の実施について http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060072401&Mode=0

特定秘密保護法の施行の細則を決める基本的な政令です。特定秘密に「秘密」と表示する方法、指定期間が満了した際の処理、秘密の取り扱い方法、適性評価の実施方法など、形式的なことを決める条文が中心です。

②「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準(仮称)(案)」に対する意見募集の実施について

秘密指定、適性評価の運用や、適正確保の仕組みについての詳細です。

③「内閣府本府組織令の一部を改正する政令(案)」に対する意見募集の実施について(特定秘密保護法関連) http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060072403&Mode=0

法律の施行にあたり、「独立文書管理監」というポストを作るというものです。

 
Q:法律用語がよくわからない。何を書いたらいいかわかりません。

A:意見を出すことで「反対」を表明し、気持ちを伝えることが重要です。どんな素朴な言葉でも、ただ「反対です」の一言でも、いいのではないでしょうか。
専門家の方がブログやホームページでポイントを紹介されていますので、ご参考になさってください。

<意見の書き方の案>

 最初に秘密保護法には反対・撤廃すべきだということを述べましょう。

たとえば、

○秘密保護法は憲法21条(国民の知る権利)を大きく侵害する法律です。自由権規約19条や、ツワネ原則にも違反します。どんな運用基準を作ろうと、憲法違反の法律だということには変わりありません。

○特定秘密保護法は、「何が秘密か、それは秘密」と言われるように、法律を犯したとされても、なぜなのかわからないまま罪に問われる可能性があります。情報を隠すことで、何が正しいことなのか判断をすることが不可能になります。

○政府は集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をおこないました。しかし、集団的自衛権行使の要件に当てはまるかどうか正確に判断したくても、政府が「特定秘密です」と言えば、国民には知らされません。戦前の大本営発表のように情報が隠され戦意高揚に資する情報のみが流された例もありました。

○私は原発の再稼働に反対です。いまでも放射能汚染の情報がきちんと報道されていないのに、秘密保護法の施行で、さらに情報がコントロールされる恐れがあります。

以上の理由から、特定秘密保護法は撤廃しかありません。どのような施行令をつくったとしても法律の違憲性を免れるものではありません。

 

 法律施行令(案)を見て、おかしいと思った意見を述べます。例えば、

○運用基準では、「出版又は報道の業務に従事する者と接触する際には、特定秘密保護法第22条1項及び第2項の規定を遵守し、報道又は取材の自由に十分に配慮すること」とありますが、報道の自由はそもそも、国民の知る権利を保障するものとして憲法でも尊重されてきた権利です。また、ジャーナリストの報道又は取材の自由だけが特に留意され、その他の環境や人権活動家などの情報公開・情報収集活動が保護されないのは問題ではないでしょうか。

○今回の「特定秘密の保護に関する法律施行令(案)」は、政府の中に監視組織を作って、官僚自らが監視するというもので、その独立性が確保できないことは問題です。

○私は医療に携わる者の信義として、患者さんの個人情報を公開することは、到底認めることができません。適合事業者の従業者についての適性評価は、現状をほとんど知らずに書かれたものとしか思えず、矛盾があります。

○テロ・サイバー攻撃、特定有害活動などに対する基準は無限定な規定が多い点が重大問題です。広範な社会活動や人間関係に無用な警戒やあつれきを持ち込み、疑心暗鬼と分断を国民の間に持ち込むものです。



 最後に、「以上の理由から、施行令(案)の内容にも、運用基準(案)にも、特定秘密保護法の施行にも反対します」。

 

参考URL(感謝します。あわせてご覧ください)

内閣官房 http://www.cas.go.jp/


日本弁護士連合会  http://www.nichibenren.or.jp/

秘密保全法に反対する愛知の会 http://nohimityu.exblog.jp/22400010/

明日の自由を守る若手弁護士の会 http://www.asuno-jiyuu.com/